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よもやまレコード

ディーター・ツェヒリン

旧東ドイツが誇るピアニスト、ディーター・ツェヒリンによるベートーヴェンのピアノソナタ。1950年のバッハ国際コンクールで特別賞を受賞、1959年に東ドイツ芸術賞(Kunstpreis der DDR)、1961年に東ドイツ国家賞(Nationalpreis der DDR)を受けたらしいので、東ドイツ的にはほとんど国宝クラスのピアニストと言うことなのではないだろうか。

ベートーヴェンとシューベルトのピアノソナタ全集の録音があるようです。

ベートーヴェンのソナタを聞きましたが、なんというか、彼のピアノは一聴してとても真面目で、とても物静かな印象。語弊を恐れずいうと「暗い」と言っても過言ではないかもしれない。
華はないし、内向的な印象の演奏だったのでしばらく距離を置いていたのだが、今回いくつかまとめて入手した事を機に聞いてみたところ、その小さなタッチの先にはツェヒリンの想いが確かに込められていてるように感じられた。
決して「学求的」のみで片づけられる演奏ではなくて、夜に部屋を暗くして一人、物思いにふけるときのあの気持ち・・そんなイメージが近い演奏で、いや、でも「沈んでいる」とか「落ちる」とかそういうことではなくて・・思考の渦に入って何かを悟った時のような、そんな言葉では言い難い、他にはない魅力が確かにある。
音楽を演奏することの「本質」だけを指先に乗せたようで、不確かさに満ちているように感じられるが、その実は確信に触れているのではないかと思わせる。
完全に人を選ぶ演奏だが、はまる人にはハマる稀有な演奏。

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