
82-83年にかけてドレスデン、ルカ教会にて録音された、ヘルベルト・ケーゲル/ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン・交響曲全集。
これ、何度聞いてもハッとさせられるんですよね。
ラジオ聴いてたら「この人だれ!?」って思うみたいに、ケーゲルのレコードを回すとだいたいそんな気にさせられる。
ケーゲルの音楽の魅力とはなんなんだろう?
私はクラシック音楽の理論や文法に詳しいわけではないので、ポップスやジャズを楽しむのと同様にクラシックを一つの音楽として楽しんでいます。世界中の色々な音楽を聞いてますが、そんな私が魅力に感じている部分とは一体なんだろう。
先ずは、あまりに美しい音色。でしょうか。
物質的というよりは、霊的にすら感じられる。
水に濡れた石畳のような静寂感の中に、霊的な孤独感がどこかに感じられるような。
丁寧で優しいケーゲルの世界は美しくも、儚いんですよね。その音のピュアさは、聞くものの心までも浄化するような澄み渡ったような美しさがあるように思います。
あとは、やはりその世界観でしょうか。
ケーゲルがどんな人物像だったのか、過去の話を聞きかじりましたが、実社会において起こったことと、彼の心の中にあった音楽とは、また別の世界での出来事と思います。
彼の音楽を聴いて(または選曲から)思うのは、彼の心の中には彼の水準の理想があり、そして現実世界は彼が思う美しい理想とは違っていた、というがあるのではないかなーと想像しています。
あくまで想像ですが。
ケーゲルが生きた時代、文化背景にどのくらい同調圧力的なもの(ベートーヴェンはこうあるべき、的なもの)があったのかのは知らないのだけど、彼が彼らしいまま生きた証がここにあるように私は感じるし、それは次の世代に伝えなくてはならない、他に代え難い命を掛ける価値さえあるものだと思う。
私が日本に本帰国する際に持って帰るベートーヴェン交響曲のレコードは、コンヴィチュニーのステレオ盤とケーゲルの全集になると思う。(あとブロムシュテットの第九 @ゼンパー)